言葉にとりつかれた男

ある男は子供の頃こう言った

「僕は言葉を喋るのが下手なのです」

その男が青年になった頃こう言った

「僕は未だに言葉を喋るのは苦手です」

その男が四十歳になった頃こう言った

「僕は、言葉を喋るのは未だに苦手です。ただ、喋らなければ得意だと気がつきました」

それ以上言葉にとりつかれた男は 喋らなかった

男は小説家となったのだった

Photo×Poem: Mitsunobu Inaba